ことりをすきになった山 [本]


これは
ずっとひとりぼっちでそこに在り続けた岩山と
小鳥のジョイの出逢いからはじまる 
ながいながい年月のものがたり・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ずっと生命あるものの温もりを知らずにいた山は
ある時 自分の元にひと休みしに立ち寄ったことりと出逢い
ことりの爪に掴まれる感覚や うずめる身体の柔らかさとあたたかさを感じ
全てが初めての体験でびっくりした。

”ずっとここに居て欲しい” と願う山にことりは 
「ここには水も食べ物もないからそれは出来ないけれど、次の春にまた来ます」
そう言って歌を歌い、飛び去ってしまう。

ひと時であっても、生命あるものと触れ合ってしまった山は
それを知らなかった時よりも一層寂しさを感じてしまう。
そして次の春を心待ちにし ジョイに再会する度に同じことを頼んでみる
「どうしてもここにずっと居てもらうわけにはいかないのかい?」と
でも、返ってくる答えはいつも同じだった。

山はずっとそこに在り続けることが出来るけれど、鳥には寿命がある。
ジョイは自分の娘にもジョイと名付け、山のところへ行くように伝える。
だから代は替わっても 毎年毎年ジョイはやってくる。
けれども、いつも決まって少しの間休んでは 歌をきかせて飛び去ってしまう。

山はどんどん寂しさを募らせた。100回目の春にジョイを見送ると 
とうとうこらえきれなくなって心臓を爆発させた。
固い岩が砕け、山の奥底から涙の川が滔々と流れ出した。
次の年、ジョイが来ても黙って泣き続ける山
どうせすぐにジョイはいなくなってしまうのだからと・・・

翌年ジョイは 小さな種をくわえてやってきた。
そして、涙の川に近い岩の割れ目に種を植え 歌を歌い、飛び去った。
やがて種から芽が出て成長をはじめるも 山は悲しみに打ちひしがれて全く気付かない。
何度も何度も同じ事が繰り返されるうちに 
山には木が生い茂り 苔が生すようになった。
風に乗って虫たちもやってきた 生命活動がはじまったのだ。

更に時は流れ 
悲しみに沈み、泣いてばかりだった山の痛みも和らぎはじめる。
ふと我に返ると 自分の周りに生命の息吹を感じ、悲しみの涙が喜びの涙に転じた。
今ではいくつもに増えていたせせらぎが荒地を潤し 見渡す限り、一面の緑に変えていた。
すると動物たちも巣を作り出した。

そして次の春 とうとうジョイが種ではなく 
木の枝をくわえてやってきた。
山で巣を作り そこで生活するために・・・


ことりをすきになった山 (エリック・カールの絵本)


これは 悠久の時を感じるものがたり
そして 人間はたったひと時だけ
この地球に間借りさせてもらっている存在であり
自然は私たちが想像できない位永い間 
ずっとそこに在り続けているのだと気づかされるものがたり

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コノハナ

「ことりをすきになった山」

2年前かな?息子のクラスの朝の読み聞かせの本を探していて、学校の図書館で出会った本です♪ぐぐっと心をつかまれますよね!絵と言い、お話と言い…どうか音読してみてください!何とも心地がいい響きを持っていたことが、この記事を読んでよみがえってきましたから…♪

中表紙の最初と最後のページ、色が全然違うのですよね。

読み聞かせの時に「このページの色をよく見て覚えておいてね」と言って3秒くらい見せてから、お話しを読み、最後の中表紙の色を見せながら
「最初はどんな色だったっけ?」って聞きました。そうしたら「ごつごつした石の色!」「灰色!」「暗いのー」って答えてくれました。

本当に素敵なお話だったので、そんなところから印象に残ってくれて、またいつか手に撮ってもらえたらいいなって思ったの・

でも当の自分がすっかり忘れていました^^;思い出させてくれて、ありがとう♪

by コノハナ (2012-07-13 13:42) 

ともちん

ついつい山に感情移入してしまいました(^-^;)

☆人間はたったひと時だけ
この地球に間借りさせてもらっている存在

☆自然は私たちが想像できない位永い間 
ずっとそこに在り続けているのだと気づかされる物語

まさにそのとおりですね。絵本って、子ども向けだけでなく
子どもの頃のままの一面を抱えている大人にも十分癒しになるんですね。
むしろ、そういう大人にこそ必要なのかも・・・(^^)
by ともちん (2012-07-13 18:07) 

マチャ

とても素敵なお話ですね。
自然のタイムスケールの中では生命の時間はほんの
一瞬ですが、その生命の繰り返しが歴史として積み重なるのでしょうね。

普段、奈良の歴史を中心に1000年以上前の話をしていますが・・・
ほんの少し前のことなんですよね。

自然の雄大さと人間の儚さを感じます。
by マチャ (2012-07-13 20:09) 

ken

~岩山と小鳥のジョイの出逢い・・・。いいお話ですね!
ウォーキング途中で由緒ある寺社にある大きな楠の木を時々見かけます。
楠の木が数百年に亘り私たちを見守ってくれていると感じることがあります。
是非とも自然、鳥、樹木などを大事にしていきたいと思います・・・(^。^)

by ken (2012-07-14 12:46) 

Sizuku

コノハナちゃん、こんばんは☆
コメントありがとう^^
お返事がこんなに遅くなってしまってごめんなさいm(_ _)m

コノハナちゃんも以前読み聞かせをしたことがあったのね?
子供達はどんな想いでこのお話を聞いていたのかな?・・なんて想像しています。

中表紙の色の違いに注目してもらったとは、とてもいい案ですね(^^)
私も幼稚園で先生が読んでくれた本のことや
その時感じたこと(と言っても感覚的なことですが)を今でもよく覚えています。
だから、きっとコノハナちゃんの読み聞かせも
その中の誰かの心に何かを残しているろうなぁと思って^^
またいつか、ふと思いだしてこの本を手に取ってくれたら嬉しいね♪

音読してみましたよ^^
声に出して耳で文章の紡ぎだす響きを感じながら読んでみると
ゆっくりと、じんわりと 
自分の中に物語のメッセージが浸透していくよう感じました。
音読っていいですね♪

by Sizuku (2012-07-15 23:03) 

Sizuku

ともちんさんも山に感情移入しちゃいましたか?
私も読みながら苦しくなってしまいました。

でも、ことりのいのちは連綿と受け継がれ
初めて会ったジョイとの約束も同じように受け継がれていくところ
そして、長い間に岩山の様子が少しずつ少しずつ変化していくところに
悠久の時の流れを感じてすごく感動したのです。

絵本のメッセージって色々な年代に対して広く深く働きかけていて
素晴らしいと思いました(*^^*)

by Sizuku (2012-07-15 23:57) 

Sizuku

マチャさん、こんばんは^^
コメントありがとうございました♪
お返事が遅くなってしまってすみませんm(_ _)m

マチャさんの寄せて下さった感想を、肯きながら嬉しく読ませて頂きました^^
歴史のある町にお住まいの方ならではの細やかな感じ方だなぁと思います。

>生命の繰り返しが歴史として積み重なる

本当にその通りですね^^
人が積み重ねた歴史にも重みを感じますよね。
特に古都を訪れると、自然の雄大さと共にそのことを実感します。

マチャさんはそういうことを日々感じながら生活されているのかな?と思うと、とても不思議な気持になります。
素晴らしい土地に住まわれていて、うらやましい限りです(^^)

by Sizuku (2012-07-16 00:09) 

Sizuku

Kenさん、こんばんは^^
コメントありがとうございました。
お返事遅れてしまってすみませんm(_ _)m

樹齢何百年という木を見ると、確かにそのような気持になるでしょうね。
私も樹木には何か特別な想いを抱きやすいみたいで
いろいろな場所で気になる木を見るとそんな風に感じてしまいます。
実際木は樹齢に関係なく、人間をいつも見守ってくれていると感じるんですよね。

本当に!自然や動物等を大切にしていきたいですね^^

by Sizuku (2012-07-16 00:17) 

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